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生活情報 岡山生まれの幻の酒米「雄町米」

岡山生まれの幻の酒米「雄町米」

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更新日:2016年10月11日

美味しいお酒造りに欠かせない、原材料の「米」。実は岡山で、日本酒に最適と言われる「幻の酒米」が栽培されているのをご存知ですか?今回は知られざる岡山生まれの酒米「雄町米(おまちまい)」を紹介します。

酒造好適米「雄町米」ってどんなお米?

雄町米は、日本でただ1種残された、混血のない原型品種の酒米です。かつて「雄町無くして入賞できず」とも言われたこともあるほど、最高級品種として全国的にも知られています。

雄町米の始まりは、1859年(江戸時代末期)のこと。かつて備前国上道郡雄町村の篤農家であった岸本甚造さんは、ある日伯耆大山に参拝した帰り道で、田んぼの中で2本だけ長く飛び出ている変わった稲の穂を見つけます。

彼は早速これを持ち帰り、選別を重ね、慶応2年にこの新種に「二本草」と名付けました。その後周辺でも栽培されるようになり、米の名前もその土地の地名をとり、いつしか「雄町米」と呼ばれ広まっていったのです。

山田錦のルーツ

酒米として優秀だった雄町米は、各地で交配種として利用されていきます。そして現在、「山田錦」や「五百万石」等、日本で登録されている酒造好適米の実に約3分の2が、この雄町米を掛け合わせて生まれた品種です。雄町米は、混血のない原型品種であると同時に、数々の酒米のルーツであるともいえるのです。

お酒に深みを与える「雄町米」の特徴とは?

酒造りの適したお米の条件の一つとして、大粒で「心白(しんぱく)」があることが挙げられます。心白とはお米の中にある澱粉質のことで、お酒の出来に深くかかわります。

心白の利点は大きく分けて2つ。
1つ目は、麹菌が入りやすくなり、良い麹に仕上がること。2つ目は、味に深みのあるボリューム感のあるお酒に仕上がるということです。雄町米はこの心白が大きいことがわかり、酒造好適米としての評価が高まったのです。

心白の形はお米の品種によって異なります。ここでは有名な酒米、山田錦と比べてみましょう。山田錦の心白が真っ直ぐとした線條紋なのに対し、雄町米の心白は金平糖のようにギザギザとしており、菊花紋と呼ばれています。ジグザグとした心白を持つ雄町米は精米が難しく、酒造りの技術が必要とされます。

雄町米が「幻の酒米」となった所以

では、全国的にも知られていた雄町米はなぜ廃れてしまったのでしょうか。その理由の1つが、栽培の難しさです。雄町米は他の稲に比べて草丈が長いため倒れやすく、その他にも病気に弱い、収穫量が低い等の難点がありました。そのため徐々に生産者が減っていき、やがて入手が困難になっていったのです。

衰退の一途を辿っていた雄町米ですが、改めて雄町米を復活させようという動きもありました。昭和63年から平成4年にかけて「おかやま雄町米GOGO運動推進事業」が実施され、雄町米は岡山の特産米として再興を果たします。そして、全国的な雄町米の需要増大もあり、て「岡山酒造米新生産団地育成事業」でさらなる拡大を行い、平成9年には430haで栽培が行われました。
より美味しいお酒を造りたい、という酒造会社の熱い思いが、岡山での雄町米再興を達成させたのです。

実際に雄町米を使ったお酒を造っている酒造会社を紹介します。お酒の試飲ができる蔵元もあるので、日本酒が初めてという方も、気軽に訪問することができます。

赤磐酒造株式会社

赤磐市特産の雄町米や、朝日米等を使用した地域に根差した酒造りを続ける蔵元の一つ。「雄町の春」は、赤磐産雄町米を醸した純米酒。辛口でキレのあるスッキリとした味わいが特徴。

利守酒造株式会社

かつて赤磐で生産されていた軽部産の雄町米を復活させた蔵元。代表的な銘柄「大吟醸 赤磐雄町」は、地元赤磐産の雄町米のみを使った純米吟醸。

室町酒造株式会社

赤磐産雄町米と、雄町の冷泉にこだわった300年以上の歴史を持つ昔ながらの蔵元。数々の大会で受賞歴のある自慢の酒「櫻室町 極大吟醸 室町時代」は贈答用にも人気が高い。